三思一言2018.04.03

京都の古地図コレクション

◆地図の魅力

 地図のことを考えるとき、人文地理学者浮田典良先生(1928-2005)の颯爽とした、やさしい姿をいつも思い出します。先生には『長岡京市史』の地理を担当していただき、さまざまなことを教えていただきました。そのなかで最も印象に残っているのが、寺田寅彦の随筆を引用しながら、古い地図と現在の地図を比較することの大切さを説かれていることです(『長岡京市史』資料編3 1993年)。

 古来より、過去と現在を結ぶ地図に魅せられた人々によって、厖大な地図のコレクションが続けられてきました。ここではその代表的として、大塚隆のコレクションを紹介しましょう。

 大塚隆(1926-2017)は、京都の古地図蒐集・研究家です。京都図に対する熱意と探求心で、コレクターの域を超えて数多くの研究書や目録を刊行しました。蒐集の対象は古地図にとどまらず、京都へのあらゆる資料へと広がり、近世から近現代までの京都研究家とも評されています。

 その大塚コレクションの一部は、京都大学図書館に寄贈され、学術研究資料としてデジタル写真を公開する取り組みが進められています。これまでたびたび触れてきた中井家文書(京都大学所蔵)を含めて、さまざまな絵地図が高精細な画像でみることができるようになったのは、地図好きにとってはとても嬉しいことです。

 京都大学貴重資料デジタルアーカイブはこちら

 

◆地図の展示と歴史研究

 地図にかぎったことではありませんが、それを深く知ろうとすれば、やはり本物が見たくなります。厖大な大塚コレクションが寄贈された京都市歴史資料館は、とても熱心に展示を開催されています。大きい地図は取り扱いが大変ですし、多様な地図の目録づくり・管理・撮影も、とても労力のかかる作業でしょう。観覧させていただくたびに、日頃のご努力に頭が下がる思いです。

 地図は時代を映す鏡なので、それぞれの時代や社会を知らなければ正しい理解へ近づけません。京都市歴史資料館の展示には、現在の京都に対する問題意識や、歴史研究に裏付けられた公開への意欲がよく表れています。講演会や展示説明会など、一般向けの催しも活発です。2015年秋の「古地図のいろいろ-手書き地図の世界-」では、大塚コレクションから3点の「洛中絵図」がずらりと並べられ、伊藤宗裕さんの丁寧なお話しがありました。これからもいろいろな地図に出会えることを楽しみにしています。

 

 

-参考文献-

 ・伊藤宗裕『京都古地図めぐり』 京都創文社 2011年

京都市歴史資料館の古地図展-ピックアップ-

・江戸時代の京都ニュース -続・大塚コレクション展-  2018年1月26日~4月17日

・絵図のまなざし 2016年

・古地図のいろいろ -手書き地図の世界- 2015年

・大塚コレクション 古地図の世界 小図・中図のいろいろ  2013年