三思一言竹アラカルト⑹ 2021.09.23

タケノコ農家の一年


◆タケノコ農家の栽培技術

 タケノコ栽培は、春になったら藪に取りにいったらよいという単純なものではありません。敷き藁・土入れといったほかではあまり見られない手間や、土中のタケノコを掘り出すという経験と技術のたまものなのです。またシンドメ・草取り・施肥・竹伐りなど、年間をとおして神経を行き届かせなければならないサイクルがあり、これらを一年たりとも欠かすことはできません。

 栽培方法の基本はどの農家も同じですが、細かなところではそれぞれの工夫や技術の違いがあります。また、平坦地ばかりではなく、急峻な丘陵や山間部を開墾したところもあり、そういったところでは、さらにきつい重労働となります。長岡京市教育委員会が作成した『京タケノコと鍛冶文化』には、中小路勝さん(下海印寺)、西小路勇さん(開田)、齋藤敬三さん(今里)、野村重治さん(井ノ内)ら篤農家の方々の聞き取りが掲載されており、こだわりの技術とタケノコ畑への深い愛着が語られています。

◆タケノコ畑と農地の四季

 タケノコ農家といっても農業の中心は稲作です。戦前は裏作に麦や菜種をつくっていましたので、タケノコ栽培と合わせると、農作業は一年を通して切れ目なく続きます。近年は夏のナス、冬の花菜がさかんにつくられるようになり、伝統のタケノコとならぶ高い品質を誇っています。

 タケノコ畑は季節によって色合いや姿が変化しますが、さらにその「タケノコ畑」を取り囲む農地も共に移ろいます。この美しい風景を見ると、昔から変わらぬ農家の方々の勤勉を想わずにはいられません。

 

-参考文献-

・『京タケノコと鍛冶文化』 長岡京市教育委員会 2000年

YouTube京都西山の伝統農業

YouTube晩秋のタケノコ畑 敷き藁から土入れへ