三思一言竹アラカルト⑺ 2021.09.29

竹と和風文化

◆日本庭園と竹

 竹は古くから和歌や漢詩に読まれ、掛け軸や襖の絵にも多く描かれ、日本人の感性に深く浸透しています。今でも邸宅や別荘、神社や寺の一角には竹が植えられており、その美しい姿を四季折々に愛でることができます。

 西芳寺(苔寺)、大宮御所、妙顕寺「孟宗竹の坪庭」と、有名どころの一端を紹介してみました。竹そのものの美しさはもちろんですが、苔・ツツジ・さくら・紅葉などが入ると、それぞれが一層引き立ちます。また古い木造建築ばかりではなく、モダンな近代建築とも合い、すぐにそこが日本的な空間となります。

◆桂離宮の美と竹

 また竹は、さまざまなデザインの竹塀や竹垣として加工され、日本庭園の奥ゆかしさを演出します。冒頭の写真は、桂離宮の笹垣と穂竹を選びました。、東側の桂川堤防沿いに約23メートルにわたる笹垣は、苑内に生い茂っている竹を生きたまま二つ折りに曲げ、その上半分を竹垣の上から表へまわし、青々とした笹の葉を見せています。このような手の込んだ仕掛けは他に例がなく、不自然な形を自然にみせる「桂垣」の名で有名です。そこから御成門の両側は、穂垣が続きます。頭部を錐形に削いだ二つ割の太い竹を等間隔に並べ、その間に細い穂竹を横に組み込んだデザインで、ブルーノ・タウトもこの意匠に「モダンだ!」と嘆声を放ったそうです。御成り門は磨き竹を縦に並べた簡素ながら気品のある雰囲気で、さすが外観だけでも見応え十分。

 離宮の建物にも多くの竹が使われ、それはなんと用材の3割を占めるそうで、「竹の世界」から数寄の世界へ誘う仕掛が隅々まで行き届いています。木・土壁・杮・茅・縄・葦・藤つるなど自然の素材を組み合わせて、洗練された竹使いの空間が次から次へと現れ、これが超一流の「和」の空間なのかと、引き込まれていくのです。

 

-参考文献-

・上田弘一郎『日本の美 竹』 淡交社  1977年 

・『桂離宮・修学院離宮』 京都新聞出版センター 2004年

西芳寺(苔寺)

大宮御所

妙顕寺「孟宗竹の坪庭」


修学院離宮上御茶屋御成門

銀閣寺

光悦寺


桂離宮笹垣

桂離宮賞花亭

桂離宮月波楼