三思一言竹アラカルト⑻ 2021.09.30

竹のあるくらし

◆木でも草でもない竹の不思議

 日本人のくらしや文化に深く溶け込む「竹」について、上田弘一郎先生は植物としての生態を科学的に調べ、人間との関りを網羅的に研究し、社会の中で発揮する有効な価値を、膨大な著作にまとめられました。

 その視点は世界や日本全国の事例に及んでいますが、特に西山や乙訓を主要なフィールドとして活動されましたので、この地域の竹研究の「バイブル」といってよいでしょう。

 その中に「竹に花の咲くこと自体はとくべつ不思議ではない。これを開花病といって恐れるものがあるが、これは間違いである。ただ個体的寿命がきたものは花を咲かさないで死ぬ。この生死をくりかえしているうちに、年齢に関係なく咲くことや、咲いたら枯れることは不思議ともいえる」という一節があります。ご研究によれば、弘化3年(1846)から嘉永年中にかけて、このあたりで真竹の一斉大開花枯死があり、その120年後の昭和40年(1965)ごろから再び大開花と枯死があったということです。

 昨年の春、長岡京市井ノ内の石田昌司さんの淡竹(ハチク)林で、一斉に竹の花が咲き、その後枯れました。インターネットで調べてみると、全国いたるところで、このようなことがおこっているようで、いずれも原因については謎とされています。

 これから竹はどうなるのか。この現象を目の当たりにすると不安になりますが、まずはよく観察を行い、竹の性質をさらに理解していくことが大切になるでしょう。

◆竹を知り、竹に親しむ

 西山や乙訓は、嵯峨野とならぶ竹の美しいところです。ここで栽培される竹稈や筍は、本来の姿かたちが美しいばかりではなく、人々の弛まぬ労働と創意工夫の結晶が反映されているのです。しかし竹の自然枯死よりも急激な力で破壊していくのが社会の変化で、上田弘一郎先生はこのような事態についても精力的に発言・行動されました。

 その一つが昭和56年の「洛西竹林公園」の開設です。洛西ニュータウン建設のため犠牲となった竹林を悼み、日本文化を育てた竹を理解し、その有用な特性を発信する公園(資料館)を、竹を愛する市民や団体と共につくられました。このような目的をもつ施設は、世界にも類のないユニークなものです。

 その竹林公園に隣接する向日丘陵には、向日市によって平成12年から整備が始められた「竹の径」が続いています。また竹をつかったイベントや活用に対する様々な取り組みもさかんです。このような恵まれた環境を認識し、竹を取り巻く現実を学び、竹の魅力に触れていきたいものです。

 

ー参考文献-

・上田弘一郎『竹と日本人』 日本放送出版協会 1978年

・上田弘一郎『竹と人間』 京都洛西ライオンズクラブ 1982年

国登録文化財中野邸(長岡京市)

バンビオ広場クリスマスイルミネーション

高野竹工ショールーム(長岡京市)


洛西竹林の径

嵯峨野竹林の道